研究日記(H28.6)

30日(木)
・『大学的和歌山ガイド』の追い込みをしています。

29日(水)
・JR和歌山線を利用しました。奈良県の吉野口駅では、JR和歌山線と近鉄吉野線が事業者の垣根を越えて同一ホームで乗り換え可能な仕組みになっており、日中の毎時40分台にJR線の上下、近鉄線の上下あわせて計4本の列車が同駅に集まり散っていくというダイヤ調整の妙にも感心いたしました。ただ、ホーム上待合室の空調やJR線の切符印字装置が故障中であったこと、ワンマン運転のJR和歌山線で乗り口からの降車がほぼ完全に放任されていたことは残念に思いました。乗り口からの降車の放任で、いかほどの運賃収入が失われているのでしょうか。同じJR線でも、下の右の写真のように、紀勢本線の御坊以南のワンマン運転列車では乗り口からの降車を厳格に防止していたように思います。(左の写真は吉野口駅で連絡する列車群)(右の写真は降り口からの降車を徹底する紀勢本線普通列車。上富田駅で、運転席横の降り口から降車するために高校生らが2両目車内まで列をなしている様子)
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28日(火)
・院ゼミで輪読している関(2015)『中山間地域の「買い物弱者」を支える: 移動販売・買い物代行・送迎バス・店舗設置』(新評論)で、本日は沖縄や奄美で100年の歴史を有する共同売店の事例を勉強します。集落住民出資の共同売店は、単なる生活物資の販売店にとどまらず、地域商社機能や金融業を手がけるところもあるなど地域の総合的事業体として発展してきたものの、道路事情の改善やコンビニエンスストア等の進出、厳しい高齢化・人口減少の中で閉鎖や事業の縮小が進んで、平成27年現在沖縄県の離島や本島北部中心に70店弱、奄美大島に7店存在する状況となっているそうです(ピーク時の半数ほど)。買い物弱者対策として「近くに店を作る」「自分たちの店を作る」点では全国の先駆的事例と考えられるものの、「経営が厳しくほとんどボランティア。給料は月6万円」「他に受け手がなく頼まれて引き受けた」といった経営状況ではとても持続可能とは言いがたく、今後は「沖縄には存在しない」という移動販売の仕組み作りや、複数の共同売店による共同仕入れの実施と言った対策が必要と感じました。なお本日は、閉鎖されたミニスーパーを商工会有志が復活させ、全国チェーンに入ることで品揃えを豊かにし、野菜と農産物加工品や産直で対応し、調剤薬局の併設が集客に威力を発揮しているという島根県美郷町の事例も勉強します。

27日(月)
・本日の学部講義「交通システム論」のテーマは「地方都市圏の公共交通幹線と交通まちづくり」なので、世界のLRTの整備動向を調べました。1978年から2010年までのLRT開業都市については服部・宇都宮(2010)『LRT-次世代型路面電車とまちづくり-』、成山堂のpp.23-26に一覧表があります(ゴムタイヤトラム等含む。資料によって含む、含まないがあるので定義に注意する必要あり)。2011年〜2013年のデータはまだ見つけていませんが、2014年と2015年のデータはRACDAかわら版第136号にありました(原典は服部先生講演資料)。その中に英国ロザラム(Rotherham)で「TT」が2015年に開業したとありますが、TTとはトラムトレインのことで、詳しい資料はここにあります。LRTAの資料も有用です。
・日本で運輸連合の導入が進まない背景のひとつに、公正取引委員会による「独占禁止法上問題あり」との指摘があります。この指摘は、事業者とともに運輸連合を検討していた広島市の取り組み対し、平成12年になされたもので、同委員会の姿勢は現在も変わっていないようです(出典:平成26年7月28日付日本経済新聞「バス路線、再編促す法改正――運輸連合、高いハードル(列島追跡)」。市川嘉一氏の記名記事です)。広島市が運輸連合の導入検討に至った背景等については、平成9年10月21日付中国新聞朝刊「公共交通 民間各社と「連合」 バス・電車をつなぐダイヤ 共通運賃制を導入 割高な乗り継ぎ解消 広島市、検討始める サービス向上図る」が参考になり、この中で多彩な民間事業者と第三セクターを有する市が「市民サービスに徹した広島都市圏の交通網整備に向け、民間との連携を模索」する中での導入案であったことや、「公正取引委員会も関心を示し」ていたことが述べられています。

26日(日)
・『大学的和歌山ガイド』用に貴志川線の貴志〜甘露寺前、山東〜伊太祈曽、竈山、日前宮周辺の地図を作り込みました。図や表を作り込む作業にはついつい没頭してしまいます。

25日(土)
・キャンパス内に無数にあるヤマモモが、実を盛んに落とし始めました。どの木の実も指の先くらいの小ささなのですが、1本だけ、市場に出しても通用しそうな大きな実をつけるヤマモモがあります。どの木なのかは秘密です。

24日(金)
・英国がEUを離脱へ。BBCの速報で、次第に開いていく得票数を呆然と見守っていました。この激震で世界経済が冷え込めば、その影響は様々なプロセスを通じて必ず日本の交通分野、物流分野にも及んでくるでしょう。

23日(木)
・本日は講義もなく、午後に短い会議が2つあるだけで、あとは早朝から夕刻まで研究にみっちりと集中できます。きょう、あす、あさってが『大学的和歌山ガイド』執筆の山場になります。6月頭から研究室付の事務補佐員さんに来て頂いて、印刷、資料整理、簡単な図表の作成、アンケート調査の準備等でお世話になっており、仕事の進み具合が明らかに向上しています。教員が研究に集中できる環境づくりの重要性を実感しています。講義の準備や雑用に追われて疲れ果ててしまうような職場から重要な研究業績が生まれるとはとても思えません。

22日(水)
第5回(平成22年)近畿圏パーソントリップ調査より、和歌山市の平日の目的別代表交通手段構成をまとめておきます。全目的(各目的の合計)の自動車分担率は、平成12年の49.0%から、平成22年は52.9%へと約4ポイント上昇しています。
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・平成28年3月現在の全国のカーシェアリング事例(交通エコロジー・モビリティ財団)は、ステーション数10810カ所、車両台数19717台、会員数846240人で、平成25年1月現在の5641カ所、8831台、289497人から大幅に増えています。特に会員数の増加率が大きいです。

21日(火)
・今朝5時54分に大雨洪水警報が発令され、午前中は休講となりました。運動場は湖に、大階段は滝となり、クチナシの花が雨に打たれて香りを強めていました。
・大雨上がりの今朝は空気が最高に澄んでいます。環境省の大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」によると、朝7時現在の和歌山市(市立和歌山高校測定局)のSPMは0.005mg/m3、PM2.5は1μg/m3となっています。これくらいだと下の左側の写真のような澄み具合になります。SPMが0.030mg/m3、PM2.5が23μg/m3という濁った状態(今年5月20日14時)の写真(右側)と比べてみてください。
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・これだけ空気が澄んでいると、大学から約5kmの和歌山城や約10kmの紀三井寺(左側の写真)、約12kmのマリーナシティや約18kmの長峰山脈上にある有田川ウインドファーム(右側の写真)もはっきり見えます。
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20日(月)
・内閣府の高齢社会白書平成28年版によるとわが国の平成27年現在の高齢化率は26.7%で、10年前から5.6ポイント、20年前から12.2ポイント上昇しています。また、内閣府の障害者白書平成28年版によると、わが国の障がい者数は約860万人(身体・知的・精神の各障がいの合計、一部重複あり)で、国民のおよそ15人に1人が何らかの障がいを有しています(障がい種別の重複は考慮せずに単純計算)。約10年前の障がい者数は約656万人でしたので、10年程度の間に約200万人増加しています。また、厚生労働省の介護保険事業状況報告によると、平成26年末の要支援・要介護者数は約605.8万人で、5年前の約484.6万人から121万人あまり増加しています。このような中で「福祉の交通まちづくり」の重要性がますます高まっていることは言うまでもないことです。

19日(日)
・イオンモール和歌山へ出かけました。和歌山市の中高生が全員集まっているのではないか?と冗談を言いたくなるほど、グループで遊びに来ているティーンエージャーの姿が目につきました。大阪府へ流出していたかも知れない消費者を孝子峠の手前でせき止めていることや、駅前立地や路線バス・送迎バスの運行によって若者など公共交通利用層に買い物やレジャー等の魅力的な選択肢を提供していることについては積極的に評価されて良いと思います。
・イオンモール和歌山の開業をきっかけとして、南海本線と加太線の乗換駅である紀ノ川駅の乗降客数が増えてきています。1日あたり乗降客数はH24年度が2471人、H25年度が2586人、H26年度が2953人と着実に増加しており(出典:平成26年度和歌山県公共交通機関等資料集)、国の移動等円滑化の促進に関する基本方針で「平成32年度までに原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者の転落を防止するための設備の整備等の移動等円滑化を実施」すべきとされる3000人に近づいてきています。同駅には現状、階段のみの跨線橋があり、乗換駅であるという点も考慮すればこのバリアや他の問題点の解消を早急に進める必要があります。駅周辺に不特定多数が利用する公共施設や病医院なども多く、それらを結ぶ経路にも各種のバリアが見受けられることから、「紀ノ川駅周辺地区バリアフリー基本構想(仮称)」を策定し、駅周辺地区も含めた面的なバリアフリー化を進めることが望まれます。

18日(土)
・来週の水曜日に、今年度第1回目の和歌山地域経済研究機構「和歌山都市圏総合交通計画研究会掘廚開催されます。この研究会は「和歌山都市圏総合交通計画の理想像を追求し交通まちづくりの理論的支柱たること」を目的として平成26年度から開催されています。3年目ですので今年度こそは最終的なとりまとめを行い、成果をもとに、全国の有名な先生方をお招きしてシンポジウムを開催したいと考えています(H29秋に和歌山で開催予定の某学会にあわせての開催を構想中)。研究会メンバーからは松本市の総合都市交通計画を大いに参考にすべきとの意見が出されています。

17日(金)
・先日の学部4年生のゼミナールの後半は就職活動状況を自由に報告・相談しあう場となりました。その中で「うちのゼミはホワイトだ」との発言があり、学生たちの議論から、その理由には留学、就職活動などとゼミナールとの両立がしやすいことや、ゼミ活動の過度な負担感・やらされ感がないこと、学外調査等で楽しい思い出ができること、等があるようです。今後も厳しすぎず甘やかしすぎずのバランスに留意したいと思います。

16日(木)
・「妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくする」(厚生労働省HP)等を目的に導入されて10年以上になるマタニティマークですが、反感を持たれそうだ等として使用を控えたり実際に暴言を吐かれるなどの被害に遭ったりするなどの事例がたくさんあるようです。少子化は日本の滅亡に直結します。交通政策分野の研究者として、子どもや子育てと交通に関するテーマに力を入れる必要性を強く感じます。

15日(水)
平成28年度大学等地域貢献促進事業(学生共同プロジェクト研究)の募集が始まりました。和歌山県内をフィールドとした研究を行いたいという学生は応募を考えてみてください。複数の大学で学ぶ3名以上でグループを組むなどの応募条件があります。

14日(火)
・院ゼミで輪読している関(2015)『中山間地域の「買い物弱者」を支える: 移動販売・買い物代行・送迎バス・店舗設置』(新評論)で、本日は買い物代行、配食サービス、移動販売(バス型)、移動販売(軽トラ・1-2トン車型)、出張美容室といった多様な取り組みで中山間地域での買い物弱者等の対策を行っている大分県佐伯市の事例を勉強します。同市ではコミュニティバスも6路線運行されています。大分県では「大分県版買い物弱者応援マニュアル」を発行しています。
・上記文献で、店舗販売と宅配システム、移動販売、配食サービスを一体的に展開する「コープさっぽろ」の事例も勉強します。元気な人は店舗、高齢者など来店できない人は宅配システム、シートに書いての注文が難しい人などは移動販売、料理が大変という人は配食サービスと、様々な事情に応じた使い分けが出来るようになっており、今後はより条件不利の地域への対応が課題となるとのことでした。

13日(月)
・奈良県平群町でコミュニティバスを活用した観光モデルコースができ、某コンサルタントさんによると結構評判がいいのだとか。平成26年12月20日の同町での講演「公共交通を活かしたまちづくりへ」で提案したことが活かされているようです。

12日(日)
・一日しっかり休みました。

11日(土)
・学部2年生対象のフィールドワーク科目「交通まちづくり調査研究」で貴志川線沿線調査を実施しました。3班に分かれ、沿線世帯へのアンケート調査(600世帯にポスティングで配布・郵送回収)と、和歌山駅、伊太祈曽駅、貴志駅での利用客対象の聞き取り調査(目標サンプル数100)を行いました。アンケート調査の対象町丁は和歌山市永山(配布数13)、木枕(配布数10)、山東中(配布数9)、吉礼(配布数92)、伊太祈曽(配布数25)、口須佐(配布数28)、紀の川市貴志川町長山(配布数176)、神戸(配布数114)、国主(配布数132)でした。梅雨晴れの暑い中、お疲れ様でした。
・貴志川線沿線には、鏡のように穏やかで心洗われる平池や、筑波山を連想させるような秀峰・龍門山があります。「うめ星電車」「いちご電車」などに乗り、貴志駅に15〜30分ほど滞在し、猫駅長を見て、「何もないね」などと言って帰ってしまう人も多いのですが、ぜひ貴志駅から甘露寺駅までの1kmあまりをのんびりと散策して頂きたいです。写真は左が甘露寺駅付近からの龍門山、右が平池です。

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10日(金)
・とある協議会の委員就任依頼があり、お受けしました。会長に、と言われたのですがいったんお断りしました。教員の中には、いろいろな審議会や協議会で会長、副会長に推され続け、上座で議事進行するのが当たり前のようになってきてしまう者もいるのですが、私はそのようなおエラい先生にはなりたくありません。静かな研究生活を送って、協議会等では専門的立場からの助言に徹するほうが性に合っています。

9日(木)
・教授会でキャンパス内の喫煙マナー向上に関する報告がありました。先日厚生労働省の研究班が、日本で受動喫煙が原因で死亡する人は年間1.5万人に上るとの推計結果を発表しました。わが国では毎年、東日本大震災での死者数(15894人。平成28年2月10日現在、警察庁まとめ)に匹敵する方が受動喫煙が原因で亡くなっているかも知れないのです。

8日(水)
・学部ゼミナールにて、藤井・谷口・松村編著(2015)『モビリティをマネジメントする』(学芸出版社)の第三章を読みました。貴志川線と江ノ島電鉄を取り上げた章でしたが、外部の有名な先生方に貴志川線のこれまでの取り組みを評価して頂ける大変良い機会であったと感じました。

7日(火)
・某学会から、和歌山大学での平成29年度全国大会開催の打診がありました。辻本研究室では平成20年秋の第38回土木計画学研究発表会で開催校を担当し(参加者が数千人規模の大規模学会だったので体重が数kg落ちました)、平成23年秋の日本地域学会年次大会のお手伝いも致しました(システム工学部の吉田先生が主担当、私は副だったので比較的楽でした)。久々の学会開催校担当となりそうです。

6日(月)
・仕舞「井筒」の稽古が完了し、次は「東北」クセに進みます。クセというのは能の中頃の見所のことです。お謡いは今回から「俊寛」を稽古しています。

5日(日)
和歌山市長期総合計画審議会に出席しました。第4次後期基本計画の総括、第5次長期総合計画基本構想(素案)に関する議論、今後のスケジュールの確認などが行われました。第4次後期計画については、おおむね順調との事務局説明で、交通政策・道路政策関係の施策はすべて自己評価A(既に達成済み)またはB(計画どおり)という良好な進捗状況でした。第4次後期計画策定時には、交通・道路に関係する「自然環境と都市基盤が調和した快適なまち」部会において、「車社会なのに公共交通体系の充実にプラスの目標値設定をするのは無謀」といった意見もあったのですが、「市内鉄道の年間輸送人数」が19302千人から20447千人(自己評価A)、「市内乗合バスの年間輸送人数」が8369千人から8480千人(自己評価A)、「フェリーの年間輸送人数」が399千人から401千人(自己評価B)となり、見事にプラスの目標を達成しました。

4日(土)
・業績評価書の提出期限が迫ってきました。評価書の執筆は面倒ですが、ここ数年間の仕事ぶりを振り返る良い機会だと思っています。おおよその業績は担当の職員の方が入力してくださっているので、比較的楽に作業を進めることができています。「論文の本数で研究業績を評価して良いのか!質が大事ではないか!」という声があり、一理あると思っています。文部科学省の教員資格審査(いわゆるDマル合やMマル合の審査)のように各論文・著書の概要を記入させることである程度は質の面からの評価も行えるという形式に変えていくのが良いのかも知れません。ただ、そうなると評価する側、される側の作業負担は非常に重くなってしまうでしょう。

3日(金)
・平成28年度国土政策関係研究支援事業の募集が始まりました。今年の指定課題のキーワードは、住み続けられる国土、稼げる国土、将来の国土利用・管理、地理空間情報の可視化、国土・地域政策の海外展開です。
・和歌山大学国際観光学研究センターのサイトが本格的に稼働開始しました。私もメンバーに名を連ねています。

2日(木)
・国土交通省中部運輸局がみんなの交通応援プロジェクトというサイトを公開しています。地域公共交通や観光交通等に関する各地の取り組み状況、支援制度、セミナーの情報、統計情報などが分かりやすく整理されています。

1日(水)
・様々な主体による無料送迎バス・無料送迎車が拡がっているようです。三重県伊賀市のケースでは、NPO法人が大規模小売店舗と協力して運行しているバスに平成28年現在670人/月ほどの利用があるなど、少なくとも5つの無料送迎バス・無料送迎車が年間1万人ほどを輸送しています(出典:平成28年度第1回伊賀市地域公共交通活性化再生協議会資料、H28.6.1)。他の地域の事例では、道の駅が市内無料送迎バスを1日4往復運行しているケース(いたこ市内無料送迎バス)など、探せばいくらでも出てくる状態です。鉄道や路線バス、コミュニティバス、タクシー等との競合の懸念もありますが、一方で小売店等が利用者の生の声を聞きながら運行するバスであれば、それは行政が企画するバスよりも使いやすい移動手段に成長する可能性を持っています。